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UL線とはアメリカの安全規格(UL)に準拠した電線で、主に制御盤の電気信号など、弱電の分野で使用する電線です。設計思想が日本の電線と異なり、多くの種類があります。専門業者でも主要な電線しか扱っていないケースが多く、すべてを網羅するのは現実的ではありません。
当記事ではそんなUL線に関して、強電(現場代理人)4年・弱電(メーカー勤務)13年の現場経験者が解説します。記事を読み進めると主要なUL線について理解することができ、判断を誤るリスクを減らせます。
UL線とはアメリカの安全規格「Underwriters Laboratories」(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)が認証した電線のことです。
ULは、日本のPSE(電気用品安全法)やJIS規格のようなもので、アメリカにおける安全基準の指標です。特定の電線や商品を指すものではなく、その種類は数百〜1,000種類以上あるともいわれています。
UL線が日本で普及した理由は、世界市場に対応でき、設計・認証が楽だったためです。
このように、設計・販売においてUL線は都合の良い点が多く、FA機器のメーカーなどで普及したことから、部品メーカーもULに対応し、商社もUL在庫を持つ、と広がっていきました。
ULは民間の認証機関ですが、他国の規格に比べて管理が厳しめなのが特徴です。
日本のPSE(電気用品安全法)への適合は法律で義務づけられていますが、特定電気用品以外の製品では自主検査が基本となります。
また、ヨーロッパのCE(CE marking)にはルールがありますが、こちらも基本的には自主検査です。メーカーが自ら試験をして、「基準を満たしている」と宣言することが多いです。
【主要規格の比較】
ULはほかの国の認証機関に比べて厳しめな分、信頼性も高い規格です。
UL線と日本の電線の違いは用途にあります。
以下で、項目別に解説します。
UL線は「Underwriters Laboratories」という民間の第三者が認証をしており、安全な機械を作るための部品、という位置づけです。
一方、日本の電線はJISや内線規程がベースになっており、安全に電気を配るためのインフラ、という位置づけです。
UL線は、制御盤・産業機械の内部・制御盤の外部配線などで使う線です。細く柔らかいより線で、取り回しが良く、狭い機械の中でも使いやすいというメリットがあります。
一方、日本の電線はコンセント・分電盤・建物内配線など、建物に固定する線がメインです。固定前提のため比較的太い素線で、硬めの電線が多いのが特徴です。
日本の電線にも柔らかいケーブルはありますが、シースが厚く覆われているものが多く、狭所配線には向いていません。
UL線はアメリカ規格のため、断面積の単位はAWG(アメリカンワイヤゲージ)で表されます。
主要なAWGのサイズ(目安)は次のとおりです。
UL線は産業機械の配線用で、AWG24〜AWG14がよく使われます。
UL線は非常に種類が多いです。
ここでは、使用頻度の多い代表的なUL線を紹介します。
UL1007はUL線でもっとも一般的な電線です。
定格電圧や温度条件は日本の仕様を満たしており、制御盤や産業機械の配線に適しています。
構造が導体と絶縁体のみで安価なため、UL線としては一般的な電線です。
UL1015は600V・105℃対応の機器内配線用電線です 。
UL1007よりも高温になる環境や、発熱しがちな電源回路で使われます。
外装は厚めのPVCで、UL1007に比べると取り回しが若干しづらい、高価などのデメリットがあります。
UL1061は被覆が薄く外径が小さいため狭所配線に適していますが、半硬質ビニル製のため、取り回しはやや硬めです。
外装が薄いことから、被覆破れや外部ノイズの影響を受けやすく、主な用途は小電流用。
信号線や基板周りの配線など、弱電寄りの用途になっています。
UL1571は外径が小さく、完全に弱電専用の配線です。
定格電圧は30Vしかないため、電子回路や精密機器などの配線用です。
UL2464は多芯ケーブルで、一般的な信号線です。
シールド付きの電線が多いため、ノイズに強い傾向があり、制御信号や通信線に使われることが多いです。
UL2517は高耐熱の多芯ケーブルです。
耐熱温度がUL2464よりも高いため、許容電流が高い=電源配線に向いている電線となっています。外径もやや太くなっています。
UL線の許容電流はサイズやUL番号によって変わるため、メーカーのカタログや仕様書を見るのが一般的です。
公式に固定された補正係数表は存在せず、実務ではUL線の資料、日本の補正係数、メーカー資料、すべてミックスして判断していることがほとんどです。
ちなみに、日本の電線で使われている補正係数は次のとおりです。
【布設方法による補正】
【温度による補正】
【周囲にケーブルがある時の許容電流係数】
【計算例】
特にモータは突入電流で瞬間的に3〜7倍ほどの電流が流れることもあります。
選定の際は、電線メーカーのカタログ、接続機器の仕様、布設環境も考慮してください。
UL線の選定は、用途から逆算して決めるのが基本的な流れです。
以下に詳しく解説します。
最初に用途をハッキリさせます。
UL線は種類がとても多いため、「何を優先したいのか」「どこに使われる配線なのか」を決めるだけで候補は数種類に絞られます。
例えば次のような考え方です。
用途を決めるだけで、数種類に絞られます。
次に電圧や温度条件を確認します。
UL線は一般的に次のような認識です。
【電圧】
【温度】
ギリギリの設計ではなく、余裕を持たせるのが基本です。
電線の種類が決まったら、次は「どんな負荷に接続するか」「どれくらいの電流が流れるか」を確認して、サイズを決めます。
許容電流の目安は次のとおりです。
ここに電圧降下や、負荷の許容電流(負荷以上の許容電流値にする)、束ね本数(発熱の影響)なども考慮して十分に安全を持った太さにします。
ポイントは「何のために電流を流しているのか」を考えること。
この視点を持つと失敗を減らすことができます。
電気的な仕様が決まれば、次は環境的な要因を検討します。
UL線は基本的に機器内を配線する前提なので、厳しい環境の場合は別の電線(VCTなど)も検討してください。
机上ではOKでも、実際に作ってみると「狭い」「収まらない」といった場面があります。
現場では、このような物理的な要因もあり得ます。
物事にはすべて良い面・悪い面があるもので、UL線も例外ではありません。
ここではUL線のメリット・デメリットについて解説します。
UL線は「使いやすい」「海外対応している」「選びやすい」という点がメリットです。
UL線は強度や環境耐性が弱く、産業機械に特化した電線であるといえます。
UL線は主に弱電・制御盤・産業機械・輸出前提、日本の電線は主に強電・建物配線・国内前提と覚えておくと大きな失敗はありません。
【UL線】
【日本の電線】
UL線は「Underwriters Laboratories」が認証した部品で、主に産業機械の配線を想定しています。アメリカに輸出するならほぼ必須の規格で、将来を見越してUL線を使うケースも多いです。
一方、日本の規格(JISやPSE)は、主にインフラや建物に固定する配線、または電気製品全体を対象として安全性を確保する設計思想になっています。ULのように「機器内部に組み込む部品」としての規格が産業機械向けに細分化されているわけではありません。
そこから「UL線は産業機械、日本の電線は建物配線」という住み分けになっていきました。
UL線は制御盤や産業機械の配線で広く使われています。
具体的な使用例は以下のとおりです。
【制御盤の配線】
【産業機械の内部配線】
【電子機器・精密機器】
【建物の配線】
建物の配線は被覆が薄く機械的な強度が不足している上、法的にもNGです。
【露出配線】
一般的なPVC被覆は屋外や油・薬品環境で劣化しやすいため、耐候・耐油仕様の電線(MSF-2464など)を検討してください。
【可動部に使う】
一般的な汎用UL線は可動部用に設計された電線ではないため、いずれ断線してしまいます。
ここではUL線に関する実態について解説します。
制御盤や産業機械は基本的に工場で製作するため、現場でUL線を加工することは基本的にありません。
現場は暗い・暑い(寒い)・狭い・ホコリなど、劣悪な環境もあり、はんだ付けや圧着工具のカシメ作業が満足にできないためです。
まれに改造や軽微な手直しでUL線を扱うことはありますが、工場で製作した機器を日本の電線でつなぐのが基本です。
UL線の種類はとても多いため、普段使いではAWG24、大電流用ではAWG18などと規格を統一することが多いです。
日本の電線(IV)は、白・黒・赤・緑がよく使われますが、UL線は、黒、茶、赤、橙、黄、緑、青、紫、灰、白の10色が一般的です。
1サイズ持つだけで10巻の電線を管理しなければならないため、よく使う電線のみ常備しておき、それ以外の電線は都度発注する業者もいます。
UL線に適合するコネクタや圧着工具の種類はとても多く、すべてを網羅するのは現実的ではありません。
圧着工具一つ用意するのにも数万円かかるため、専門家(外注やハーネス制作業者)に頼むのが一般的です。特殊なコネクタの場合、外注業者から「圧着工具を貸してほしい」と依頼されることも珍しくありません。
UL線は、主に制御盤や産業機械などの機器配線で広く使用されている電線です。種類によって定格電圧・温度・用途が異なるため、使用環境に合わせた選定が重要になります。
海外向け設備やUL認証が求められる機器では採用される機会も多いため、それぞれの特徴を理解した上で適切に活用しましょう。
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