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補償導線とは?普通の電線との違い・種類・選び方を解説

2026.08.06
補償導線とは?普通の電線との違い・種類・選び方を解説

補償導線とは、熱電対(センサー)と温度計測器とをつなぐ導線のことで、熱電対とほぼ同じ熱起電力特性を持っています。

普通の電線を使うと測定誤差が出てしまい、数℃〜十数℃ずれてしまうこともあります。

1〜2℃のズレは一見小さそうに見えますが、半導体や医薬品・食品加工など、業界によっては不良や事故につながることのある重要な要素です。

この記事では補償導線の説明や、普通の電線との違い、種類や選び方など、多岐にわたって解説します。

記事を読むと補償導線の理解が深まり、正確な温度測定ができるようになります。

補償導線とは

補償導線とは

補償導線とは熱電対(温度センサー)と計測器をつなぐ導線のことで、温度を正確に測るために必要不可欠なものです。

「電気を流す」という意味では、普通の電線と役割は同じです。

ただ、補償導線は熱電対と似たような熱起電力特性を持った導体で作られており、測定誤差を限りなく抑えることができます。

補償導線の定義

補償導線は、熱電対に近い熱起電力特性を持つ延長ケーブルで、正式には「熱電対用補償導線」(Extension and compensating cables for thermocouples)といいます。

普通の電線では、接続点で熱起電力が発生して計測誤差が生じるため、熱電対とよく似た特性を持つ合金を使用しています。

熱電対とまったく同じ材質でないのは、「高価すぎる」ことと「扱いづらい」ことが主な理由です。

また、熱電対の材料は硬くて折れやすい場合があり、配線工事では施工しにくい場面もあります。

補償導線が通る場所は制御盤や室温環境などが多く、-25〜200℃くらいしか想定しないため、この間の熱起電力特性が同じ合金を使用しています。

普通の電線との違い

補償導線と普通の電線との大きな違いは、温度による電圧変化を考慮して作られているかどうかです。

普通の電線は「電気を流す」のが目的ですが、補償導線は「微弱な温度信号を狂わせずに伝える」のが目的です。

そのため、次のような違いがあります。

項目 補償導線 普通の電線
導体材料 熱電対に近い熱起電力特性を持つ合金 主に銅
重視する性能 熱起電力の誤差の少なさ 許容電流・絶縁性能・耐久性
導体径 比較的細い(0.3〜2.3sq程度) 用途に応じて幅広い(0.75〜数百sq)
絶縁材料 用途による 用途による
価格 比較的高価 一般品は安価

補償導線が必要な理由

補償導線が必要な理由

補償導線が必要な理由は、熱電対に普通の電線を使うと測定誤差が出てしまうためです。

熱電対は数mVレベルの微弱な電圧が発生します。例えば、K熱電対なら100℃でも約4mVしかありません。

1℃上がるのに約40μV(1/25000V)という微小な電圧変化ですから、ここに普通の電線(銅線)を使うと、温度差で熱起電力が発生し、誤差が生じるおそれがあります。

熱電対とゼーベック効果の仕組み

熱電対はゼーベック効果を利用して温度を測定しています

ゼーベック効果とは、2種類の異なる金属の接合点に温度差を与えると電圧が発生する現象のことです。

熱電対とゼーベック効果の仕組み

金属の中には自由電子が存在します。

温度が高くなると電子の運動が活発になりますが、金属ごとに電子の動きやすさは違います。

そのため、異なる金属を接続して温度差を与えると、電子の偏りが生じ電圧が発生します。

補償接点とは何か

補償接点とは熱電対(温度センサー)と補償導線をつなぐ接点のことです。

熱電対と指示計(表示部)は離れていることが多く、その間の配線を普通の電線(銅)で行ってしまうと、温度差が生じたときに熱起電力が発生します。

(熱電対の金属と普通の電線(銅)は材質が違うため)

補償接点とは何か

それによって測定誤差が現れ、正常な温度が表示されなくなり、数℃の誤差となってしまいます。

補償導線は、熱電対に近い熱起電力特性を持つ合金を使って、誤差の影響を少なくしています。

補償接点とは何か

補償導線の種類

補償導線の種類

補償導線は、金属の材質によってエクステンション型とコンペンセーション型に分類されます。

両者の違いを理解して最適な導線を選ぶようにしましょう。

項目 エクステンション型(延長型) コンペンセーション型(補償型)
概要 熱電対をそのまま延長する 熱電対の特性を近似して延長する
導体材料 熱電対とほぼ同じ材質 安価な代替合金
熱起電力特性 熱電対とほぼ同一 一定温度の範囲で近似
価格 高い 安い
主な用途 精密計測・高温測定 工場設備・一般温度計測

エクステンション型(延長型)

エクステンション型は延長型とも呼ばれ、熱電対と同等の熱起電力特性を持つ材料が使用されています。

JIS規格上はK型ならKX、J型ならJX、T型ならTXのように”X”という文字で区別されます。

熱起電力特性は熱電対とほぼ同じで、高精度の測定が可能。高温測定用途でも高い精度を維持できます。

デメリットは、高価であり、長距離の配線になるほどコストが膨らむことです。

精密な測定や、高温環境での測定以外ではコンペンセーション型が選ばれることが多いです。

コンペンセーション型(補償型)

コンペンセーション型は補償型とも呼ばれ、安価な合金(鉄・銅・ニッケルなど)を使って一定の温度範囲内(例えば0〜100℃の間など)で熱電対と同じ熱起電力特性を持たせています。

エクステンション型に比べると安価なため、精度を必要としない、一般的な温度計測で用いられる補償導線です。

JIS規格上は、K型ならKCA・KCBなど、”C”という文字が用いられています。

熱電対タイプ別の対応種類

熱電対にはK型、J型などさまざまなタイプがあり、それぞれのタイプに応じた補償導線が用意されています。

種類 対応熱電対 許容差(μV) 補償接点温度(℃)
クラス1 クラス2
KX K熱電対 ±60(±1.5℃) ±100(±2.5℃) -25〜200
KCA - ±100(±2.5℃) 0〜150
KCB - ±100(±2.5℃) 0〜100
JX J熱電対 ±85(±1.5℃) ±140(±2.5℃) -25〜200
TX T熱電対 ±30(±0.5℃) ±60(±1.0℃) -25〜100
EX E熱電対 ±120(±1.5℃) ±200(±2.5℃) -25〜200
NX N熱電対 ±60(±1.5℃) ±100(±2.5℃) -25〜200
NC - ±100(±2.5℃) 0〜150
RCA R熱電対 - ±30(±2.5℃) 0〜100
RCB - ±60(±5.0℃) 0〜200
SCA S熱電対 - ±30(±2.5℃) 0〜100
SCB - ±60(±5.0℃) 0〜200
BC B熱電対 - 0〜100

※:B熱電対用補償導線は、クラス2の許容差規定がありません。

必ず熱電対のタイプと一致した補償導線を使いましょう。

補償導線の選び方

補償導線の選び方

補償導線を選ぶときは必ず次の事項を守ってください。

  1. 使用する熱電対の種類に合わせる
  2. 精度・使用温度範囲を考慮したタイプを選ぶ
  3. シールドの必要性を検討する
  4. 使用環境に応じた被覆材質を選ぶ

これらを守らなければ正しい温度計測ができません。

1.使用する熱電対の種類に合わせる

もっとも重要なのは、使用する熱電対のタイプ(K・J・T・E・R・Sなど)と一致した補償導線を選ぶことです。

タイプが異なる組み合わせ(例えば、K型熱電対にJ型補償導線)では特性が合わず、測定誤差が数十℃に及ぶことがあります。

図面・銘板・既存配線の色などから熱電対のタイプを必ず確認しましょう。

2.精度・使用温度範囲を考慮したタイプを選ぶ

高精度・広温度範囲が必要ならエクステンション型を、コスト重視で常温付近の計測ならコンペンセーション型を選びます。

また「どれくらい正確に温度を測りたいか」によって許容差を決めます。

JIS C 1610では補償導線の許容差がクラス分けされています。

  • クラス1:高精度
  • クラス2:普通

少しのズレも許されないならクラス1を、そうでなければクラス2を選びましょう。

3.シールドの必要性を検討する

インバータや動力盤の近く、サーボモータ回路の近くなど、電磁ノイズが多い環境では編組シールドや金属テープシールドの補償導線を選びましょう。

両者の主な違いは以下のとおりです。

項目 編組シールド 金属テープシールド
構造 細い金属線を網状に編む 金属箔を巻く
ノイズ性能 高周波に強い 低周波〜全体的に強い
柔軟性 高い やや硬い
コスト やや高め 比較的安価
現場性 可動部向き 固定配線向き

4.使用環境に応じた被覆材質を選ぶ

屋内の一般的な環境ならビニル被覆(PVC)、高温ならガラス編組や被覆、油や薬品が想定される環境では耐油・耐薬品被覆を選定します。

屋外配線では電線管などで保護することが望ましいです。

補償導線のJIS規格と色識別

補償導線のJIS規格と色識別

JIS C 1610の概要

補償導線はJIS C 1610「熱電対用補償導線」によって、熱電対タイプ別の許容差(クラス)、絶縁体色、外被色などが規定されています。

国際規格IEC 60584-3とも対応していますが、色のルールはIECとJISで一部異なるため、輸入品を扱うときには注意が必要です。

熱電対タイプ別の色識別方法(色分け一覧)

補償導線は誤配線防止のため、絶縁体と外被の色が熱電対の種類ごとに定められています。

施工時にはJIS C 1610の色識別一覧表を確認し、極性の誤接続がないように注意してください。

【補償導線の種類】

熱電対の種類 JIS-2012 JIS-1995(参考) JIS-1981(参考)
記号 被覆色
(IEC規格)
記号 被覆色/区分1
(IEC規格)
被覆色/区分2
(JIS-1981)
記号 被覆色
K KX 緑-緑/白 KX 緑-緑/白 青-赤/白 KX 青-赤/白
KCA KCB WX
KCB KCC VX
J JX 黒-黒/白 JX 黒-黒/白 黄-赤/白 JX 黄-赤/白
T TX 茶-茶/白 TX 茶-茶/白 茶-赤/白 TX 茶-赤/白
E EX 青紫-青紫/白 EX 青紫-青紫/白 紫-赤/白 EX 紫-赤/白
N NX 桃-桃/白 NX 桃-桃/白 - - -
NC NC - - -
R RCA 橙-橙/白 RCA 橙-橙/白 黒-赤/白 RX 黒-赤/白
RCB RCB
S SCA SCA SX
SCB SCB
B BC 灰-灰/白 BC 灰-赤/白 灰-赤/白 BX 灰-赤/白

補償導線は熱電対専用の導線。用途・精度に応じた選定が必須

補償導線は熱電対専用の導線。用途・精度に応じた選定が必須

補償導線は、正確な温度測定を実現するために必要なものです。

  1. 熱電対と同一タイプに合わせる
  2. 精度・温度範囲でタイプを選ぶ
  3. ノイズ環境ならシールド付き
  4. 環境に応じた被覆を選ぶ

この4つを押さえることで、用途に適した補償導線を選定できます。

また、JIS C 1610で定められた色と極性を確認することで、誤配線によるトラブルも防げます。

当サイトでは、K・J・T・E・R・B・N型に対応した補償導線を、エクステンション型・コンペンセーション型・シールド有無・被覆材質ごとに豊富に取りそろえています。

サイズや熱電対のタイプ、被覆の材質などで検索できるため、必要な導線をすぐに見つけることができます。

現場で必要な1本をぜひ当社のラインナップからお選びください。

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