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CVTケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル・トリプレックス)は、JIS規格で定められた電力ケーブルで、単心のCVケーブルを3本撚り合わせて一体化した構造を持ちます。
各線心の導体には電気用軟銅線(必要に応じアルミ線も使用)を使用し、その周囲を架橋ポリエチレン(XLPE)で絶縁しています。さらに各線心の外側にはビニルシース(PVC外装)が個別に施されており、3本のシース付き線心がらせん状に撚り合わされています。撚り合わせ構造のため、一括シース型の多芯CVケーブルと異なり介在物(フィラー)や共通外装を必要としない点が特徴です。
CVTケーブルは600Vから6.6kVまでの範囲でラインナップされており、用途に応じた絶縁体の厚さや構造が定められています。低圧用(600V)では、導体を直接XLPEで被覆し、各線心にPVCシースを施すというシンプルな構造です。一方で高圧用(3.3kVおよび6.6kV)では絶縁性能を高めるため、導体の上に内部半導電層、XLPE絶縁体、さらに外部半導電層と銅テープ遮蔽層を重ね、各線心を個別にシースで覆う構造が採用されています。
たとえば、6.6kVのCVTケーブルでは、導体の最高許容温度は90度に設定されています。各相の識別はシース下に施されたテープ(白・赤・青)によって行われ、外側のシース色は黒とされています。
導体は、標準的に8sq(mm2)程度まではより線(多芯)構造が用いられ、60sq以上の大断面では、導体断面をできるだけ円滑に密集させるため、円形圧縮より線が採用されます。 CVTケーブルは、実用上おおむね325sq程度までが製品化されており、400sqを超えるような大容量が必要な場合には、単心ケーブルを3本個別に布設するのが一般的です。
なお、メーカー各社が製造する600V CVTの仕上外径は、たとえば38sqで約28mm、150sqで約47mm前後、325sqではおおよそ66から67mm程度となっています(各社共通傾向)。
近年では、銅価格の高騰や軽量化ニーズへの対応として、導体にアルミを使用したCVTケーブルも普及しつつあります。アルミ製CVTでは、識別のために外装シースを青色とするケースが多く、同じサイズの銅製CVTと比較して重量を50パーセント以上軽減できるとされます。さらに、1サイズ大きいアルミ導体を使用しても、30パーセント以上の軽量化が可能と報告されています。
ただし、アルミは銅に比べて導電率が低いため、同じ断面積では許容電流が小さくなります。また、取り扱い時には元の形状に戻ろうとする反発があるため、必要に応じて1サイズ以上上げる、または扱いやすくするための加工を施すなどの工夫が行われています。
CVTケーブルは、その信頼性と汎用性の高さから、低圧から高圧まで幅広い送配電用途で使用されています。 具体的には、ビルや工場などの受配電設備において、幹線ケーブルとして活用されており、キュービクル(高圧受電設備)から主幹分電盤・動力盤までの引き込み配線や、盤から大型電動機・変圧器などへの電源配線にも多く使われています。住宅やオフィスビル、商業施設、工場、病院といったさまざまな施設に対応でき、規模や用途を問わず採用可能なため、現代の建築設備における主力幹線ケーブルと位置づけられています。
屋内配線では、ダクト、ケーブルラック、電線管内への収容に使用されるほか、CVTケーブル自体が比較的高い耐候性を備えていることから、屋外での露出配線にも対応可能です。ビニルシースは紫外線や風雨に対して一定の耐久性があり、必要に応じて支持金具を用いて壁面や架台に沿って布設されます。また、シース付きケーブルであるため直接埋設も可能であり、地中配電線として管路を使わずに埋設されたり、電柱間における架空配線として、支持ワイヤと併設する形で吊り下げ敷設される例もあります(多くのメーカーが、CV/CVTケーブルの直接埋設・架空布設対応をカタログ上で明示しています)。
このようにCVTケーブルは、屋内外を問わず、発電所・変電所から配電線路、構内の電気設備に至るまで、さまざまな環境で広く使用されています。
また、法令上、高層建築物において非常用負荷へ給電する回路などでは、耐火ケーブル(FPケーブル)の使用が求められる場合があり、所轄の官庁や消防の基準に沿ったケーブル選定が必要です。
CVTは、各相の導体が独立したシースに収められ、隙間に介在物が存在しない構造のため、放熱性に優れています。その結果、同じサイズの多芯CVケーブルと比較して、より大きな許容電流を確保できます。
たとえば、3心を一括でシースに収めるCV-3Cでは、線間の空隙をフィラーで埋めて円形断面を保つ構造上、内部に熱がこもりやすくなり、許容電流が低下します。これに対してCVTは、各相を撚り合わせた構造により熱が拡散しやすく、大電流の通電に適しているという特長があります。
CVTケーブルは3本の単心ケーブルを撚っているため曲げ半径を小さくでき、同等断面のCV-3Cに比べて取り回しが容易です。外径は撚りの分だけわずかに大きくなるものの数ミリ程度で大差なく、一括ケーブルに比べ軽量(介在物・共通シースが無いため)であることと相まって配線作業性に優れます。
実際、ケーブル曲げや盤内への引き回しでCVTはより扱いやすいとの評価があり、端末処理時にも3本の撚りを解くだけで各相を単心ケーブルのようにばらせるため末端処理が簡便です。
CVTケーブルは、従来のCVケーブルと比較して価格差がほとんどなく、許容電流の向上により設計上の余裕を持たせやすいため、コストパフォーマンスに優れています。 現在では、多くの電設資材カタログにおいてCV-3Cに代わる標準的な幹線ケーブルとして掲載・在庫されており、入手性も高いため、新設工事・更新工事を問わずCVTを選定するケースが増えています。
撚り構造であることから、同じ断面積・同じ定格のCVTケーブルは、多芯構造のCVケーブルに比べて仕上がり外径がやや大きくなる傾向があります(おおよそ数パーセント程度)。しかし、前述のとおり許容電流の向上などの利点が大きいため、実用上は大きな支障とはなっていません。
ただし、ケーブルの支持や貫通部の処理においては注意が必要です。一括シース型であれば、1本のクランプやグランドで固定・防水が可能ですが、CVTでは3本を1組として取り扱う必要があります。そのため、盤の穴に引き込む際には、単心3本用の防水ブッシングや、3本を同時に締め付けられる特殊なクランプを用いるなど、適切な施工上の工夫が求められます。
撚標準品のCVTケーブルは、シースに塩化ビニルを使用しているため、燃焼時に有毒なハロゲンガスや黒煙を発生させます。人命や設備への影響を抑える観点から、トンネル、地下街、データセンターなどの環境では、後述のEMケーブルへの置き換えが進められています。
また、耐火性能(加熱時に一定時間通電機能を維持する性能)についても、通常のCVTは耐火ケーブルではないため、非常電源回路などには使用できません。
このような用途では、耐燃性や耐火性を備えた特殊ケーブルを選定する必要があります。
前述のとおり、CVTケーブルは実質的に325sq程度までが製品化の上限となっており、それを超える導体断面積が必要な場合には、複数本の単心ケーブルで対応せざるを得ません。 たとえば、500sqの幹線が必要となるような大規模プラントでは、CVT(325sq)を2回線並列で敷設するといった方法が採られるケースもあります。
このため、非常に大容量の電力を1条でまかなう用途には適していませんが、これはCVケーブル全般に共通する制約といえます。
CVTに特有の欠点ではありませんが、高圧CVTケーブルでは、絶縁層に水トリー劣化対策が施された「E-E型」(内部・外部半導電層を同時に押出成形した構造)の仕様が主流になりつつあります。 E-E型のCVケーブルおよびCVTケーブルは、水分による絶縁劣化に強いという特長を持つ一方で、端末処理の際に外部半導電層を剥がす作業に手間がかかる点に注意が必要です。
また、ケーブルの敷設時には、引張張力の制限や最小曲げ半径を守る必要があります。これらの施工上の基本的な注意点は、CVTケーブルでもCVケーブルでも共通です。
CVTケーブルは、日本工業規格(JIS)において電力用ケーブルとして位置付けられています。低圧用の600V CVおよびCVTケーブルは、JIS C 3605(600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)で規定されており、CVTについても「単心より合わせ形」としてJISに適合した製品が製造・流通しています。
一方、高圧用の6600V CVおよびCVTケーブルは、JIS C 3606(6600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)に準拠しており、さらに水トリー劣化を抑制するための阻止層を押出成形したE-E型に関しては、電線工業会規格であるJCS 4395(3層押出型高圧耐水トリーケーブル)が参照されています。
また、中間電圧の3300V CVおよびCVTケーブルについては、JISでの明確な規定がないため、業界標準としてJCS 4516(3300V耐燃性ポリエチレンシースケーブル)などの規格が適用されています。
電気設備に関する総合的な安全基準である「電気設備技術基準」およびその解釈において、CVケーブルおよびCVTケーブルは、一般の配線用電線として使用が認められています。
特に高圧ケーブルの選定に関しては、日本電気協会が定めるJEAC 8001および8011(高圧受電設備規程)において、耐水トリー性を向上させたE-EタイプのCVケーブルの使用が推奨される旨が追記されるなど(2014年改訂版)、信頼性を確保するための業界ベストプラクティスが示されています。
CVTケーブルについて、構造・仕様から用途、他ケーブルとの比較、メーカー動向、規格面に至るまで詳細に調査を行いました。CVTは、従来のCVケーブルと比べて多くの利点を備えており、現在の電気設備においては主流の幹線ケーブルとして広く採用されています。
一方で、使用環境に応じたケーブル種別の選定も重要です。設計・施工にあたっては、関連法規や各種規格を遵守した適切な対応が必要となります。